2000年の春に上海へ渡ってから、
あれからもう二十年以上が経った。
あの頃の街並みや人の声、夕暮れの匂いが、
今もふとした瞬間に蘇ることがある。
そして来月、いよいよ再びその街へ行く。
心の奥でずっと響いていた言葉がある。
“好久不见(hǎo jiǔ bú jiàn)”——久しぶりだね。
どれほどの時が流れても、
この言葉には懐かしさと温かさが同居している。
聞けば、今の中国ではもうほとんど現金を使わないらしい。
買い物も食事も、すべてスマホひとつで済ませるという。
早速、Alipay(支付宝)とWechat Pay(微信支付)をスマホに入れてみた。
“扫码支付(sǎo mǎ zhīfù)”——QRコードで支払う。
“不用现金(bú yòng xiànjīn)”——現金はいらない。
その光景を想像すると、
かつて小銭を握りしめて生活をしていた自分を思い出し、
少し不思議な気持ちになる。
地図アプリも準備した。
Google Mapが使えない代わりに、
“百度地图(Bǎidù dìtú)”——百度の地図 を入れた。
画面に映る街の名前が懐かしい。
「淮海路」「延安西路」「交通大学」——
見覚えのある文字が静かに心を揺らす。
“世界变了(shìjiè biàn le)”——世界は変わった。
“可是回忆没变(kěshì huíyì méi biàn)”——でも、思い出は変わらない。
出発まであと少し。
eSIMの契約を済ませて、
旅行保険の手続きをして、
あとは心を整えるだけだ。
きっと、今の上海は僕の知らない顔をしているだろう。
けれども街の風の中に、
あの日と同じ匂いを見つけられる気がする。
“上海,我又来了(Shànghǎi, wǒ yòu lái le)”——上海、また来たよ。
今回の一言
“上海,我又来了(Shànghǎi, wǒ yòu lái le)”——上海、また来たよ。
変わりゆく街に、変わらない心を。
再び出会う場所で、新しい風を感じたい。