TOP >> 上海留学日記2000 (2000年4月〜2001年2月の交換留学生活)
 


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2000年8月19日〜21日

2000年8月19日(土) 熊本から寧波へ荷物をとどける旅

そもそも寧波に行く予定などなかった。先月、日本へ一時帰国したときに、熊本市で顔見知りの華僑の人が経営する中華料理屋さんで働く余さんというおばさんに出会ったのが始まりだ。余さんは浙江省寧波市出身で、寧波にいる高校生の息子にぜひ会って荷物を渡して欲しいと僕に頼んできた。リュックサックほどの荷物を預かり僕は必ず渡しますと約束をして、余さんとは別れた。そして今月7日に上海に戻り、とうとう荷物を渡しに行く日がやって来た。上海から寧波までは列車で5,6時間かかる。朝9時30分発の列車で上海駅を後にし、14時02分に寧波駅へ到着した。余さんの息子とは初対面で顔が分からないので、僕の名前を書いた紙を持って置くように頼んでおいた。寧波駅の改札を出て、高校生くらいの男の子が不安そうな顔をして、画用紙を持ち上げてこちらの方を見つめていた。画用紙の字を見ると間違いない、僕の名前が書いてある。すぐに駆け寄り、握手をしてリュックを渡した。名前は王子健「ワン・ズジエン」、17歳、9月に高校2年生になる。寧波で優秀な高校に通っていた。駅に迎えに来たのは王子健と彼のおばさん(王子健の母親の妹)とおばさんの息子(王子健のいとこ)、それに王子健のクラスメートの女の子4人。昼2時に着いたので、とりあえず家に行って休む事に。寧波は上海とは比べ物にならないくらい小さな街だけど、上海の喧騒の中から抜け出して骨が休まる気分がする。駅からバスで30分くらいの郊外にある王子健のおばさんの家に3日間お世話になる事になった。


寧波駅に到着

左から王子健、彼のおばさんの子、
おばさん(王子健の母親の妹)

2000年8月20日(日)

朝、8時に起きて、寧波市内を王子健と彼のクラスメートの子と見て回ることに。しかし、この日はどしゃ降りの雨で結局、デパートの中を見たり、街の施設の中で卓球をしたりと名所旧跡は回らなかった。この日の夜はおばさんの旦那さんが水餃子を作ってくれた。具は、新鮮な豚肉とネギ、それに皮はもちろん自分で作る。食べきれないほどの水餃子に白葡萄酒がテーブルに並んだ。そういえば昨日、おばさんに「何の酒が好きか?」と訊かれたので、「白葡萄酒だ」と答えていた。わざわざ買ってきてくれたのだろう。王子健は僕から見るとかなり優秀で非の打ち所の無い高校生だった。真面目で勉強ができて、スポーツも万能で、遊びもうまい。日本にいるお母さんとは手紙のやり取りをしていると教えてくれた。王子健は友達付き合いについて僕に相談してきた。学校に友達はいることはいるけれど親友と呼べる友達は2人くらいしかいないらしい。僕は小学校、中学校、高校、大学と自分の経験を踏まえて、今はそう悩むかもしれないけど、大学に入れば世界が広がってきっといい友達ができるからと話して聞かせた。それにしても王子健は僕を兄貴のように思ってくれて、話しかけるときは必ずお兄さんの意味の「哥哥」(ガーガ)と呼んでくれる。僕も弟ができた気分だった。王子健のおばさん(王子健の母親の妹)は明るくとても気配りのある人だった。シャワーの時に「今日着た服は出しなさい」と言うから出しておくと、翌日、遊びから帰ってきたときは既にきれいに畳んで置いてあった。この日の夜は王子健を近くのインターネットカフェに連れて行き、e-mailアカウントを持たせた。「これで頻繁に連絡が取れあうから」と言うと喜んだ様子だった。


王子健とクラスメート。雨やどりをしつつ、
フルーツを口にする。

おばさんの旦那さんが水餃子を作ってくれた 。

王子健が通う高校で、クラスメートの子と。


2000年8月21日(月)
今日上海に帰るので電車の切符を買いに行く。夕方5時発の電車でそれまで時間があるので、王子健が自分の通う高校を案内してくれた。寧波にある学校で最も優秀な高校2つのうちの1つらしい。全校生徒は2000人、夏休みにもかかわらず授業に参加している学生を見た。 王子健は将来は上海の大学に行きたいらしい。そして大学では外国語で日本語を選択することまで教えてくれた。やはり母親の影響が強いのだろう。学校の中を一通り案内してくれたところで、バスに乗って改築が終わったばかりという寧波体育館へ行く事に。記念にみんなで写真を撮る。おばさんも王子健もホントは1週間くらい僕に寧波へいてほしかったらしいけれど、僕は上海で用事があるからと、言い、次は秋にまた来る約束をした。おばさんが電車の中で食べなさいと果物やらパンやらを買ってくれて持たせてくれた。刻々と電車の発車する5時が近づき、王子健もおばさんも名残惜しそうな表情をする。王子健は駅の改札で別れる時、両手で僕の手を堅く握り締めて来た。まともに目を合わせることはできなかった。思いも依らぬ出会いから寧波への旅が始まり、想像もしなかった貴重な体験と素晴らしい思い出に浸りながら寧波駅をあとにした。


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